2025年度 カンボジア ボランティア活動 国際歯科医療支援・医科歯科健診レポート
2025年06月08日 ~ 13日
カンボジアの子供たちに笑顔を届ける——ボランティア活動・国際歯科医療支援・医科歯科健診と心温まる交流を毎年実施
1.はじめに
フォレストデンタルグループ、
医療法人メイ・ロイヤル、
こうのす共生病院
が実施したカンボジアにおける
国際歯科医療支援、医科歯科健診、
ボランティア活動の記録です。
この活動は、誰かの強制ではなく
「自らの意志で手を挙げ、その中から
選ばれたメンバー」によって構成され、
参加者一人ひとりが“誰かのために自分の力を活かしたい”という思いを胸に集まり活動を行いました。
子どもたちの健康と笑顔を守るべく行ったボランティア活動の成果と、今後の展望についてまとめています。
写真は、国際医療支援&ボランティア活動に持って行った物の一部です。
(治療に必要な治療用ポータブルユニットや歯科材料、孤児院の子供たちへの生活用品とピザやうどんを一緒に作るための食材など)
2.支援の背景
カンボジアは1970年代後半、ポル・ポト政権下において極端な共産主義政策が敷かれ、
知識層を中心とした大量粛清が行われました。
この歴史的悲劇により、歯科医師を含む多くの医療関係者・教育者が命を落としました。
その影響は現在も色濃く残っており、カンボジア全土での歯科医師数はわずか約300人。
その多くが首都プノンペンなど都市部に集中しており、シェムリアップをはじめとする地方都市では、
適切な歯科治療を受けることが困難な状況です。
その影響か、今この令和の時代でも日本では当たり前の予防歯科(歯みがきの大切さ)の概念が
十分に浸透しておらず、歯磨きの習慣がない家庭も多く見受けられます。
実際にブラッシング指導を行った際には、「初めて歯ブラシを持った」という子供も珍しくありませんでした。
今年の国際歯科医療支援にて歯科健診や診察した子どもたちの中には、虫歯のない子もいますが
乳歯のほとんどが虫歯になっていたり、虫歯が進行して歯が黒く変色している子供もおり、
日本では考えられない状況です。虫歯になっても治療が受けられず、痛みを我慢するしかない環境は、
子どもたちの健やかな成長を確実に妨げています。
3.多職種・多世代によるチーム医療の実現
歯科ボランティア・国際歯科医療支援の活動は、法人が掲げる、「チーム医療」「地域・社会への貢献」が
活動の源となっています。医療法人として「単なる診療所」ではなく「社会的に存在意義のある医療チーム」
を目指すことにあります。また、歯科医師、歯科衛生士、スタッフや他法人の歯科クリニック、
歯科ではない医科と1つの目標に向かって協働することで、組織文化の強化・コミュニケーション力の向上、
国内勤務では味わえない医療現場に挑むことで、課題解決力や応用力が養われ、人材教育にも好影響があります。
この数年継続して活動していく中で、今年は、去年の活動に興味を持っていただき、
個別で参加していただけるところまでの輪が広がり、世代や職種、所属の垣根を越えて共に歩んだ医療チームが
成り立ちました。それは単なる医療支援にとどまらず、参加者一人ひとりにとっても学びと成長の場となりました。
参加者は歯科医師、歯科衛生士、受付、事務職、そして病院の医師、看護師、看護助手、作業療法士、
他法人の歯科クリニックの方々、外部大学所属の医師で構成された、職域を超えた連携が実現し、世代構成も
20〜40代と若く、エネルギーと柔軟性をもって、それぞれの専門性を活かしながら協働、支援を行いました。
下記が各構成となります。
歯科医師3名、歯科衛生士1名、歯科助手2名、訪問歯科コーディネーター1名、事務1名
歯科医師2名、歯科衛生士1名、歯科助手2名
医師1名、看護師1名、看護助手1名、理学療法士1名、事務1名
群馬大学医学部附属病院
医師1名
東北大学病院
医師1名
現地日本人参加者
医師1名、歯科医師1名
サポート・バックアップ協力:アンコール共生病院
4.支援の内容
- 地方の子どもたちへの無料歯科検診・初期治療の提供
- 歯磨き習慣を身につけるための実践的な教育活動
- 耳鼻科検診・初期治療、ロコモティブシンドロームの簡易健診
- 現地医療スタッフへの医科・歯科の衛生・保健指導支援
- 子供たちとの笑顔での交流
少しですが、活動のダイジェスト動画と写真です。
5.実施概要
5-1. 実施期間
2025年6月8日〜2025年6月12日
5-2. 支援地域と学校
シェムリアップ州
・Butterfly Paradise Orphanage(約100名)
・クヴィアン中学校(約300名)
・「共生の家」孤児院(約10名)
5-3. 主な支援内容
- 歯科医療支援による健診・応急処置(健診約400名中、処置約60名の児童)
- 歯ブラシ約500セット(ササキ株式会社様よりご提供)や食料品の寄付
- 紙芝居や実演を交えた歯磨き指導プログラムの実施
- 小学校と連携した「歯みがき習慣と歯みがきの大切さ」啓蒙活動と歯ブラシのプレゼント
- ロコモティブシンドローム(移動機能障害)の簡易検診(400名)
– 立ち上がりテスト・片足立ちテストなどを通して発育・筋力状態を確認
- 耳鼻科健診(外耳観察・耳垢チェック)を簡易実施(約400名)
– 健診の結果、耳垢による耳閉感や聴力低下の疑いがある児童が複数名確認
– 該当児童には清拭対応およびその場での処置を実施
5-4. アンコールワット観光と学校見学
6.検査結果と課題
6-1. 主な結果
- むし歯罹患率:85%
- プラーク付着率:85%中(多量18%、少量82%)
- 歯石付着率:50%中(多量8%、少量92%)
- 歯茎の発赤率:18%
- 歯茎の腫脹率:15%
- 歯茎からの出血率:11%
※各検診の結果をもとに、対象児童には個別フォローアップを実施し、
保護者への検診結果書・歯みがきの大切さの資料の配布
6-2. 課題と今後の対応
- 現地での歯科医療支援 → 現地で勤務可能な歯科医師、歯科衛生士の確保
- 歯磨き習慣の習慣化への活動 → 紙芝居や実技指導の継続的な活動とパンフレット作成・配布を検討
- 学校の先生と保護者の理解と協力体制の必要あり → 学校と家庭向けパンフレット作成・配布を検討
- 耳鼻科領域の支援体制が不十分 → 今後の活動で耳衛生の啓発と専門家連携を視野に
- ロコモの兆候を示す児童に対し、栄養・運動・衛生の3方向から継続的な支援計画が必要
7.ボランティア活動をしたスタッフの感想
フォレストデンタルクリニックあやせ院 S院長(歯科医師)
フォレストデンタル西新宿院 T院長(歯科医師)
フォレストデンタル大宮院 (歯科衛生士)
フォレストデンタル大宮 (歯科助手)
8.今後の展望
- 巡回診療体制の定期化・支援対象地域の拡大
- 歯科のみならず、耳鼻科・身体機能など多角的な医療支援の強化
- 保健室機能の整備・支援拠点の構築
- 日本の専門家・支援団体との連携を進め、持続可能な支援モデルを構築
- ロコモ・耳鼻・歯科を中心とした「小児予防医療プログラム」の開発と展開
9.まとめ
本活動は、歯科にとどまらず、子どもたちの健康全体を見守る包括的支援として展開しています。歯が痛くても治療できない、
体がうまく動かせない、耳が聞こえにくい――そんな状態が放置されれば、学びや成長の機会が失われてしまいます。
私たち元気グループ(フォレストデンタルグループ・こうのす共生病院)は、医療者としての責任を果たすとともに、
「痛みなく、聞こえ、動けて、笑顔で生きる子どもたち」を増やすことを目指し、
カンボジアでの国際歯科医療支援活動、ボランティア活動を継続していきます。
来年度のボランティア活動にご興味のある方は、下記までぜひご連絡ください。
医療従事者に限らず、どなたでもご参加いただけます。
▼このような方へ:
- 医科・歯科の医療従事者の方
→ 現地での診療支援や健康教育活動にご協力いただけます。 - 企業のCSR担当者・社員の方
→ 社会貢献活動の一環として、社員のボランティア参加を通じて国際支援に貢献できます。 - 学生や一般の方で、絵を描くのが好きな方
→ クビアン小中学校の壁に絵を描くアート活動に参加できます。 - 国際支援やボランティア活動に関心のある方
→ 現地の子どもたちと里親制度を通じて貢献できます。 里親会員 – 「共に生きる」ことを何よりも大切に。 – 特定非営利活動法人 – 共生フォーラム - 自分のスキルを社会貢献に活かしたい方
→ 国際医療支援PR、物資支援、通訳など、さまざまな形で参加できます。
▼活動内容の一例:
- 歯科・医科診療のサポート
- 健康教育・衛生指導
- 学校施設の美化(壁画制作など)
- 子どもたちとの交流
お問い合わせ・参加希望:
医療法人社団デンタルケアコミュニティ法人事務局
TEL:03-5771-2691
Email:info@forest-dental.or.jp
Webサイト:フォレストデンタルグループ